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2022/10/14お役立ち情報

日本建築を学ぶⅡ ~茅葺屋根と現代屋根の違い~

前回、古民家とは何か?現代ではなぜ建てられないのか?などを『日本建築を学ぶ ~古民家と現代住宅の違いとは~』でお伝えしました。
では、古民家の何が優れていて、なぜ現代では同じ構法が少ないのかを具体的に取り上げていきたいと思います。

 

【茅葺屋根の特徴】

昔の日本家屋をイメージすると、茅葺屋根を思い浮かべる人が多いと思います。
瓦屋根が伝来する前までは、身近にあった材料の『ススキ・ヨシ・藁・イネ』などを束ねて、屋根を造っていました。
雨が多い風土なため、急な勾配を付けているのが特徴です。

※出典:神戸かやぶき古民家倶楽部

【茅葺屋根のメリット】

多年草をいくつも束ねて重ねることにより、内部までは水が浸入せず、雨漏りや雪に強い屋根になります。
通気性も良く、遮熱・断熱・吸音性にも優れています。
そして、昔の生活ではかまどや囲炉裏で火を焚く生活をしていました。
火を焚くことで、煙が立ち昇り、それが防腐・防菌・防虫に効果がありました。
そのうえ、火を焚くと上昇気流が起こり、外気を取り入れ、風が生まれて、家屋全体の空気が循環されます。
そして、湿気を取り除き、木材を乾燥させるので、夏場でも火を絶やさなかったようです。

※出典:美山民族資料館

【茅葺屋根のデメリット】

茅葺屋根の欠点は、耐火性が悪いことです。
一度火が付くと直ぐに延焼して、甚大な被害が出てしまいます。
そのうえ、乾いていると軽いため、強風などで飛んでしまうこともあります。
素材が自然であるため、普段の手入れが行き届かないと耐久性が悪くなります。
しかし、現代では茅葺屋根の施工が出来る職人が少なくなり、メンテナンスにも費用が掛ります。
全てを葺替しようとすれば、1件の家が建つほどの価格になると言われています。
そのため、もし火が付いても直ぐに消化できるように、天水桶などが設置されている屋根もあります。

※出典:社寺建築の豆知識

 

【進化していく屋根】

茅葺屋根には魅力がたくさんありますが、時代の変化に伴い衰退していき、耐火性・耐久性が高い瓦屋根が採用されるようになりました。
ただ、瓦屋根は重く、家屋に負担を掛けてしまうため、耐震性に劣ります。
そして、軽くて丈夫な金属屋根などが出てきました。
しかし、どの屋根材でも、メリット・デメリットがあります。

※出典:神清

 

【屋根がない家】

どの屋根を選ぶにしろ、永久にメンテナンスや葺替が要らない屋根はありません。
そして、屋根をさわるには、足場を建て、しっかりと修繕する必要があるため、それ相応のお金が掛ります。
では、屋根がない家にすれば良いのでは?という疑問がでてきます。
『屋根がない=軒がない家』ということになります。

※出典:家づくり学校

 

屋根がフラットか片流れになっていることが多く、シンプルでスタイリッシュですよね。
施工費が安く、居住スペースを広く確保できるため、近年増えてきているイメージがあります。
ただ、四季があり雨の多い日本では、雨風が窓に直接降り注ぎ、雨音が気になったり、窓を開けられないこという声があります。
そして、直射日光を遮るものがないため、家が熱くなりやすいです。
そのうえ、外壁は雨水・風・太陽光に常にさらされ続けるため、劣化しやすく、雨漏りをしやすいので、定期的なメンテナンスが欠かせません。
一度雨漏りがあれば、屋根だけではなく、外壁の修理も必要なことがあり、修繕費は高くなる可能性があります。

※出典:家づくり学校

 

【最もコストが掛らない屋根】

先述してきたように、昔は身近に手に入る素材から、風土・気候にあった茅葺屋根が採用されてきました。
その欠点を補うために、瓦屋根を採用し、またその欠点を補うために、金属屋根が採用されてきました。
どんな屋根にするにしても、メリット・デメリットがあり、どれを選べば良いのか答えが出ないという人も多いかもしれません。

実際にどの屋根にするかは、主に金銭面で選ばれる人が多いのではないでしょうか。
常に、直射日光・強風・豪雨に耐えないといけない屋根は、当然ですが耐久性が求められます。
耐久性を上げようとするとコストも上がってしまします。

一番コストが掛らないのは、何処でも手に入る素材で、自身でメンテナンスできる屋根と言うことになります。
そうなると、極端になりますが、縄文時代の土屋根に遡ってしまいます。
因みに、耐用年数は、10年程度と考えられています。

※出典:日本の観光地・宿

 

【新たな可能性の海草葺き屋根】

SDGsが浸透していく現代では、ライフスタイルに合わせたうえで、身近な素材を使い、人・自然に優しいものを選んでいきたいという人が近年増えてきたのではないでしょうか。

そんな中、注目したいのが『海草葺き屋根』です。
海草の一種『アマモ』を使用した屋根が、デンマークで研究開発されています。
デンマークのレス島では、『アマモ』から作られた『海草葺き屋根』があり、現在200年になる屋根があるそうです。
100年に一度、屋根の葺替をすれば良いそうです。

※出典:HEAPS

一度は、気候変動により『アマモ』が枯渇したため、1930年代に『海草葺き屋根』は衰退してしまいました。
現在、『海草葺き屋根』を扱える職人は、世界に10名ほどしかいません。
しかし、この『アマモ』の凄いところは、塩を含んでいることから、耐火性に優れていること。
そして、雨が降れば少しずつ固まり、耐久性が増していき、コンクリートより頑丈なのだそうです。

※出典:HEAPS

 

この『海草葺き屋根』の研究開発をされているのは、アメリカ人のキャサリン・ラーセンさんです。
キャサリン氏は、18歳の頃に日本に滞在し、日本の茅葺屋根や伝統建築に興味を持ち、デンマークの『海草葺き屋根』に辿り着いたとのことです。
『アマモは、世界のいろんなとこにあります。将来は大量生産も視野に入れている。将来的には、アマモを敷き詰めたものをパネル式にして、誰でも扱えるようしたい。現在はプロトタイプの段階だが、自然の草を敷いた優しく強い古来の屋根たちが、世界の街並みに戻ってくるかもしれない。』と話されています。

※出典:KYOTO SIDE

 

【進化して循環する屋根】

屋根は、普段の生活ではあまり目にしません。
そのため、どの屋根材を選ぶかより、コストやデザインから何となく選ばれている人もいるかと思います。
ただ、家屋にとっては、最も重要な部分です。
雨風や直射日光から、一番に私たちを守ってくれる存在と言えるのではないでしょうか。
そのため、昔は『棟上げ』を村人総出で行い、現代でも簡略化して『上棟式』が執り行われることがあるのでしょう。

※出典:生形工務店

 

『昔の人は偉かった』という言葉をよく耳にしますが、何事にもその時代の風土・気候、そして生活様式に合わせた『知恵』を先人達が教えてくれています。
古からの知恵に、現代の知恵を合わせたものが、融合していれば最適です。
しかし、ただ大量生産ができて、コストが安いからという選択をしていくと、将来どうなるのでしょう。
答えは、未来にならないと分からないかもしれません。

しかし、家屋の場合は、現存している古民家という一つの答えがあります。
この地震大国で、築100~300年の古民家が現存しているというだけでも凄いことのように感じます。
もちろん適切なメンテナンスを行っていた結果であり、実際に住めば不便な点は多くあると思います。
ただそこに、適切な現代の知恵を入れていって欲しいと切に願います。
今後も、古民家から、様々な先人の知恵を見つけ出し、お伝えできればと思います。

※出典:Feel KOBE『箱木家住宅』