コラム
2022/9/9お役立ち情報
日本建築を学ぶ ~古民家と現代住宅の違いとは~
【日本の伝統建築『古民家』とは】
近頃『古民家』という言葉をよく耳にするようになりましたよね。
古民家での田舎暮らしや、古民家カフェなど、憧れている人は多いのではないでしょうか。
では、古民家と一般的な住宅との線引きは、何かご存知でしょうか?
実は、明確な定義は定められていません。
基本的には、築年数が50年以上であり、日本の伝統構法で建てられている木造住宅を『古民家』と呼ぶようです。
【在来工法(建築基準法)と伝統構法の違い】
『伝統構法』も時代・用途により、変化し続けてきたので、明確な定義付けは難しいです。
ただ、西洋建築学を取り入れるようになり、在来工法へと変化してきました。
明治24年(1891年)の濃尾地震の翌年に発足した「震災予防調査会」が、西洋建築の考えを取り入れた「建物耐震化」を初めて提唱していることから、およそそれ以前までの家屋は、伝統構法であると言えるでしょう。
ただ、在来工法と伝統構法がはっきりと区別されているわけではなく、どちらの要素をどの程度取り入れているかであり、年代・地域・気候風土により多種多様になります。
足元 |
建物には土台を敷き、基礎に金物で緊結する | 石場建てなど、基礎に緊結しない場合もある |
構成 |
筋交いや火打など斜材を使う | 貫・差物などによる水平垂直の貫構造 |
接合部 |
金物で結合する | 木の特性を活かした継手仕口加工による「木組み」 |
壁 |
ボードやバネルなどが多い | 小舞下地の土塗り壁または板壁 |
木材の扱い |
合板や木質系といった木質系工業製
品も使う |
木をそのままに使う製材が基本 |
材料 |
均質であることが前提となる | 自然素材を扱うため、多様で不揃い |
自然の脅威に |
外力に対して、堅固に対抗する | 変形しながら粘り強くこらえ、もちこたえる |
変形性能 |
損傷限界は 1/120 安全限界は 1/30までと規定される |
軸組の曲げ抵抗、木材のめり込みによる接合部の回転抵抗、壁体の剪断抵抗により、より高い変形性能を有する |
在来工法(建築基準法) |
伝統構法 |
【日本建築と西洋建築の違い】
日本は、古来より木・土・草・紙などの身近にある自然素材を使い、家屋を建ててきました。
先ず、柱を建てることから始まります。
西洋は、石やレンガを材料に、頑丈で耐久性の高い家屋を建ててきました。
先ず、壁をつくることから始まります。
そして間取りでは、日本家屋は境界線が曖昧であり、西洋家屋は明確であると言えます。
【境界が曖昧な日本の間取り】
日本は四季が在り、夏は暑く、冬は寒いことから、自然素材を上手に使い、調湿や風通しを考えられた工夫が多くあります。
そして、外と内を遮断するのではなく、自然の四季の変化を感じ、上手く利用できるように作られています。
① 天候に左右されず、いつでも農作業などができるように、土間が在ります。
② 田の字型の間取りが一般的で、襖を外せば大きな一部屋にもなります。
③ どの部屋も開口部が大きく、風通しに優れています。
④ 縁側があり、急な来客でも、腰を掛けてコミュニケーションを取れる場所になります。
⑤ 縁側を覆う軒は、夏の日光を遮り、冬の日光を取り込む役割があります。
上記以外にも、利点は多くありますが、どの部屋を何のために利用すると明確にしているわけではなく、状況に合わせて対応できるように造られています。
【境界が明確な西洋の間取り】
西洋は、冬の日照時間が短く、乾燥した夏なので、寒さを如何に遮断して、快適に過ごせるかという工夫が多くあります。
そして、家は頑丈でシェルター的な考え方で造られていて、何処の部屋を何に使うのか、用途が明確にされています。
① 石造りで頑丈で、耐久性が高く、外敵からの襲来から守ることを考えられている。
② 窓が小さく、寒さや雨風を防ぐように、外と内を遮断するように作られている。
③ 外から内に入ると、先ずリビングへ行き、各々の部屋へ向かうことを考えられている。
④ 暖炉で、家全体を暖め、換気できる工夫がされている。
⑤ 自然を感じるために、外にテラスなどがある。
上記のようなことから、家は長く使用する考え方が強く、築100年や300年の建物が多く残っていて、今でも普通に住宅として使用されています。
【現代の日本建築】
前述してきたことから分かるように、現代日本の家屋は、伝統構法に西洋建築の良いとこを取り入れた結果と言うわけです。
どちらかと言えば、木造で西洋風家屋を造っているイメージですよね。
そのためか、少しずつ矛盾が出てきているのかもしれません。
伝統的な日本に合った素材で、日本に合う間取りに憧れを持つというのは、自然なことかもしれません。
ただ、伝統構法で伝統的木造建築の家を新築しようとしても、建築基準法の壁があり、許可が下りません。
そのうえ、良い木材が手に入り難く、木組みを操れる腕のいい大工さんも少なくなっています。
実際に、現在の建築基準に合わせ、伝統的木造建築を新築で建てるとなると、かなりお金が掛ってしまいます。
しかし、田舎では空き家問題などがあるため、古民家を格安で購入でき、もしくは借りることができるので、さらに魅力が上がっているのでしょう。
そのため、古民家を住みやすく改修して、住んでみたいという方が増えているのかもしれませんね。
現代の住宅と古民家どちらが良いというのではなく、自身のライフスタイルや将来を考えて、メリット・デメリットを知っておくことが大事です。
次回からは、そんな古民家のメリット・デメリットを具体的に取り上げていきたいと考えています。
※出典:すまいポート21