コラム
2021/3/19リフォーム
木の家で健康になれる?!
〜木材の効果の化学的根拠〜
木でできた空間や、ものに触れると温かみを感じたり、優しくて『ホッ・・』とリラックスした気分になることはありませんか? まず、木の特徴として、空気を繊維の中に多く含むため、断熱性や保温性に優れています。木のぬくもりを感じるのは、そのためなのですね。また、木が目に優しいのは、紫外線を吸収し、赤外線を反射させるからで、他にも音を吸収したり、衝撃をやわらげたり、湿度調整もしたりと、とても機能的です。
このように、木に触れるとほっとしたり、リラックスしたりするのはなぜでしょうか?イメージだけではなく、科学的に実証されているのでしょうか?
ヒノキやマツなどに含まれる香り成分「α-ピネン」がもたらす効果とは?
森林総合研究所では、2015年から木材による視覚、嗅覚、触覚刺激が人間の生理・心理面に与える影響について、データの蓄積を進めてきました。
「木材の良さ」に関する科学的 なエビデンスとなる貴重な研究です。その結果、ある種の木材の香りが赤ちゃんの体を「リラックス」させる可能性があること、木材の手触りが金属やプラスチックなどの他材料に比較して体に「やさしい」ことが分かりました。
<以下は、『国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所』(第3期中期計画成果集)より抜粋>
生後1~3か月の赤ちゃんにヒノキやマツなど、針葉樹に多く含まれる香り成分、α-ピネンを嗅いでもらう実験を行いました。
まずは香りのない状態で 2~3分間安静にしてもらった後、α-ピネンの香り を2~3分間赤ちゃんの鼻の近くで流し、最後にもう一度においのない状態で安静にしてもらいました。
この間、赤ちゃんの生理応答として脳の活動と心拍数を連続的に測定したところ、香りを流している間は脳の活動が上昇し、赤ちゃんがにおいを感じていたと推測されたのです。
また、心拍数が減少していたことが分かり、赤ちゃんも木の香りで「リラックス」したのではないかと考えられます。
<以上、『国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所』(第3期中期計画成果集)より抜粋>
木材の感触がもたらす、人への影響とは?
次は手触りに関する研究です。
<以下は、『国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所』(第3期中期計画成果集)より抜粋>
森林総合研究所では様々な材料で作った手すりを被験者に触ってもらい、その間の生理的な反応を測定した結果、金属(アルミニウム)、プラスチック(ポリエチレン) の手すりに触ったときには収縮期血圧が上昇しましたが、木材の場合は、針葉樹でも広葉樹でも、また塗装があってもなくても、変化が認められませんでした。
すなわち、木材への接触は、金属やプラスチックより体に負担をかけない可能性があると考えられます。
<以上 『国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所』(第3期中期計画成果集)より抜粋>
近年は、生活スタイルの変化から、日々暮らしの中で木の温もりに触れる機会が減少し続けています。日用品もプラスチックや金属、石油由来の素材の製品が中心になってきました。
しかし、豊かな森林や山野を有する日本において、古くから木材は大切にされ、暮らしや文化・伝統を大きく形作ってきました。
その価値が今改めて見直されているのではないでしょうか。
ここでご紹介した研究では、様々な方法で人の生理的な反応を測り、ある種の木材の香りが 血圧を低下させたり、脳の活動を鎮静化させるなど、体を「リラックス」させることを明らかにしてきました。また、木材の手触りによる影響についてもデータに基づく身体的根拠があるのですね。
木造住宅や、木質化リノベーションも見直されています。木造住宅はひと昔前に比べて技術面が飛躍的にアップしたことと、コンクリート造の約3分の2のコストで施工可能なため、これからも木造住宅建築数は、ますます増加することでしょう。また,コンクリート住宅に比べ,木造住宅にはアレルギーの主原因である屋内塵性ダニ類が少ないと言われています。