コラム
2021/6/18リフォーム
現代見直されている左官とは?
【左官とは】
モルタルや土、そして漆喰といった材料を使って、建築物の床や壁を塗り固めていくのが左官工事です。
手にしたコテを自由自在に動かして、壁を塗っていく職人の姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
一般的に左官工事というと、建築物の表面部分の仕上げを担うイメージが強いかもしれませんが、実際には壁の土台となる下地造りが多くを占めています。
近代的な内装では、壁仕上げの工法(壁紙)が主流になって以降、左官壁が施工されることは少なくなりました。
しかし近年では、その優れた性能が見直され、施工を希望する人が増えてきています。
左官壁は、外壁でも使用されますが、今回は内装での左官について取り上げてみました。
【左官壁のメリット】
●調湿性
左官壁は、湿度が高い時は湿気を吸収し、逆に低い時は放出する「調湿性」に優れています。
高温多湿な日本には、最適な壁材といってもいいでしょう。
結果として、結露やカビ、ダニなどの発生予防効果も期待できます。
●断熱性
左官壁は断熱性能が高く、夏の暑さや冬の寒さを防ぎやすくなります。
冷暖房の効率アップで室内が快適になり、光熱費の削減にもつながるでしょう。
●吸音性
下地材の上に塗り重ねられた土や漆喰は、高い吸音性を誇ります。
外部からの騒音を防げるのはもちろん、家の中の音が外に漏れるのも防いでくれるのです。
●耐久性
左官工事は、床や壁の耐久性を高める重要な役割があります。
下地造りは、壁や床の仕上がりを左右する重要なポイントです。
仕上げにどれだけ良い材料を使っても、下地の出来が良くないと、ひび割れなどの欠陥が生じてしまいます。
●アレルギー対策
左官工事で壁や床を塗るときに使われる素材は、土や珪藻土、漆喰といった自然素材がほとんどです。
アレルギーやシックハウス症候群を引き起こす物質を含まないため、リフォームの際にこうした素材を選ぶ人が増えています。
●デザイン性
職人の技によって造られた漆喰壁や土壁は、見る人が思わずはっと息を飲むほどの美しさ。
コテの使い方によって変わる風合い、そしてつなぎ目を感じさせない仕上がりが魅力です。
左官職人が手仕事で塗った壁は、ひとつとして同じ物がありません。
住宅の細部までこだわる人、自分たちだけのオリジナルの住まいが欲しい人には、左官工事による壁や床は最適です。
【左官壁の種類】
●漆喰
・材料…石灰に海藻糊、すさ(麻)などを混ぜて練り上げたものです。
・特徴…漆喰は古くから建物の外壁や内壁に使われてきた材料です。
白いイメージが強いかもしれませんが、近年では多彩な色を使えるようになりました。
漆喰は、呼吸する材料だともいわれ、湿度の高い時期は水分を吸収し、乾燥する時期は水分を放出して部屋の中を快適に保ってくれます。古くは蔵の壁に多く使われ、その湿度調整ができる特徴によって貴重な収蔵品を守ってきました。
漆喰の主な原料である石灰石は不燃性で防火性が高いこと、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを吸着・除去してくれることから、現代の住宅にも多く取り入れられています。
●珪藻土
・材料…植物プランクトンの一種である珪藻の殻からできている素材です。
・特徴…海や湖で珪藻が死ぬと、死骸は水底に堆積して殻だけが残ります。
それが化石となった岩石が珪藻土なのです。
完全な自然素材で有害な化学物質を含まないため、アトピーやシックハウス症候群といったアレルギー症状を引き起こす心配がありません。
吸水性、耐火性、断熱性に優れているので、暮らしを守るという意味でも注目されている素材です。
左官壁に使う時は、糊を加えて固めます。
●聚楽壁(じゅらくかべ)
・材料…聚楽土と言う色土を使ったのが聚楽壁です。
・特徴…現在では、同じような仕上がりになる壁をすべて聚楽壁と呼んでおり、使う土によって多彩な色を生み出すことができます。
●白州壁(しらすかべ)
・材料…南九州を中心に産出される『シラス』(火山噴出物が堆積したもの)を使った壁です。
・特徴…火山の多い日本では入手しやすいため、白く美しい壁をローコストに実現できます。
●モルタル
・材料…セメントと水と砂を混ぜて練り上げたものです。
・特徴…コンクリートと似ていますが、砂利は使用しません。仕上げ材としてはもちろん、壁自体を作るのにも使用可能。いわゆるコンクリート打ちっ放しに近い雰囲気を出せ、スタイリッシュなデザインから人気を集めています。
●プラスター
・材料…プラスターは、鉱物質の粉末を水で練った石灰または石膏のことをいいます。
・特徴…白く美しい輝きが特徴で、漆喰壁に似ていることから西洋漆喰と呼ばれることもあります。
●ジョリパッド
・材料…アイカ工業から発売されているアクリル系の壁仕上げ材です。
・特徴…塗料に砂などを混ぜて作られており、180 以上のカラーと100 以上のデザ インから選ぶことができます。
【左官壁の仕上げパターン】
●鏝(コテ)を使用した仕上げパターン
・コテ波…漆喰で仕上げるときに人気の模様です。
・扇仕上げ…その名の通り、扇状に模様を残していく仕上げ方法です。
・スパニッシュ仕上げ…壁全体を厚塗りしたあとに、コテでエッジを効かせて塗り跡を長方形になるように塗り跡を残していきます。
●ハケを使用した仕上げパターン
・ハケ引き仕上げ…ブラシタイプのハケを使い、横線模様を残していく仕上げ方法です。
・コテバケ仕上げ…コテの表面がハケになっている道具で、全体が平になっている壁を塗るときに使います。
●その他の道具を使用した仕上げパターン
・ローラー仕上げ…ローラーを使って塗壁材を塗って仕上げていきます。
・スポンジ仕上げ…キッチンで使うスポンジを使って仕上げていく方法です。
スポンジを優しくこするように、壁全体に模様をつけていきます。
このように、左官材料や仕上げ方には様々な方法があり、組み合わせ方を選ぶのは難しいと思います。
ただ、壁紙にはない陰影が素晴らしく、個性的な物に仕上がります。
【左官壁のデメリット】
今まで述べたように、左官には色々魅力がありますが、当然デメリットもあります。
一般的なデメリットは、下記の通りです。
●工期が長い
クロス張りは、通常1-2日で工事が終わります。
それに比べ、左官は1週間ぐらい工事が掛ってしまいます。
作業の流れは、下塗り→乾燥(2-3日)→上塗り→乾燥(2-3日)となるため、どうしても乾燥に日数が掛ります。
●工賃が高い
左官は、基本的には職人さんによる手仕事。
日数が掛れば、それだけ日当が高くなり、クロス張りと比べれば高くなります。
●仕上がりに差がでる
クロスは、一面同じ柄を張っていくだけのため、仕上がりに大きな差はできないことが多いです。
その一方左官は、職人さんの実力で仕上がりは全く異なります。
DIYでされる方も居られますが、一度塗ってしまってからのやり直しは、余計な時間とコストが掛って仕舞います。
●拭き掃除はできない
左官壁は、ホコリを払う程度のお手入れになります。
濡らすとシミになってしまう事がありますので、基本的に拭き掃除はできません。
【オススメの左官工事】
内装に左官を取り入れたいと考えている方にお勧めするのは、ポイントとなる部分や一面だけに左官壁を取り入れるという方法です。
アクセントとして左官壁を採用することで、一層味わいが出てきます。
そのうえ、コスト面でも抑えられて経済的です。
和室であれば、全面することをオススメしますが、床の間だけでも雰囲気は十分出ると思います。
最近では、個人でもDIYで簡単に塗れる左官材料が売られています。
挑戦してみるのも楽しいと思いますが、仕上がりがイメージ通りにならないことが多いと言われています。
もし試す場合は、範囲の狭い壁から塗ることをオススメします。